民事裁判のIT化 メリットその1
政府は、民事裁判のIT化を図るため、民事訴訟法の2年後の改正を目指すことを3月10日閣議決定しました。IT化には利用者にとって3つの利点があります。第1はペーパーレス化です。現在、書面をやり取りしなければ、裁判はできません。原告も被告も訴状,答弁書,準備書面などの書面を裁判所用に1通、被告用に人数分、弁護士自身の控えに1通、依頼者用に1通,つまり、事実上同じ書面を最低4通作っています。また、証拠もそのコピーを最低4通作ることになります。複雑な事件では、準備書面を双方が何回も出し、沢山の証拠も必要です。その紙の量は、凄いことになります。時々、「ウチは印刷所か!」と思うことがありますし、法廷で、廷吏さんがリヤカーのようなもので、事件記録を用意するのを目にすることもあります。

第2は提出が瞬時に済むことです。それらの書面を提出するには、裁判所へ持って行くか郵送しなければなりません。この点は、準備書面等はファックスでも良いとされています。ただ,ファックスの書面は鮮明ではないため、できれば使いたくないのですが、他の業界では、既に死物化したファックスも司法界では必需品のままです。
第3は期日の出頭が不要又は大幅に減ることです。裁判の期日の中でも法廷で行う口頭弁論には、必ず出頭しなければなりません。遠隔地の裁判所に裁判を起されれば、5分で終わるときでも、飛行機に乗り、場合によっては前泊する必要があります。それがテレビ会議で済むことになります。もっとも、現在でも非公開で行う弁論準備手続に限っては、裁判所の電話会議システムを使って一方の当事者のみが出頭しないで行うことはできます。それでも,電話会議は,相手の顔が見えず,やりにくいものです。
このようにメリットがあるIT化ですが、海外を見れば、アメリカでは約20年前に始まり、韓国でも、10年前に実現しています。日本だけが取り残されているということで、今回の動きとなりました。
